商品名 | 薬物 | 効能・効果 | 上市年 | 脂質組成 | PEG修飾 |
ビスダイン® | ベルテポルフィン | 中心窩下脈絡膜 の新生血管を伴 う加齢黄斑変性症 | 2004 | DMPC/EPG | なし |
アンビソーム® | アムホテリシンB | 真菌感染症 好中球減少症 リシューマニア症 | 2006 | HSPC/DSPG/Chol | なし |
ドキシル® | ドキソルビシン | 卵巣がん エイズ関連カポジ肉腫 | 2007 | HSPC/Chol/MPEG-DSPE | あり |
オニバイド® | イリノテカン塩酸塩水和物 | がん化学療法後に 増悪した治癒切除 不能な膵がん | 2020 | DSPC/Chol/MPEG-DSPE | あり |
EPG: Egg phosphatidylcholine
HSPC: Hydrogenated Soybean Phosphatidylcholine
DSPG: 1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphoglycerol
DSPC: 1,2-Distearoyl-sn-glycero-3-phosphorylcholine
Chol: Cholesterol
MPEG-DSPE: N-(Carbonyl-methoxypolyethylene glycol 2000)-1,2-distearoyl-
sn-glycero-3-phosphoethanolamine sodium salt
ビスダイン内封リポソーム:ベルテポルフィン®
用法・用量 | ベルテポルフィンとして6 mg/m2(体表面積)を10分間かけて静脈内投与(点滴)し、 本剤投与開始から15分後にレーザー光〔波長 689±3 nm、光照射エネルギー量50 J/cm2 (照射出力600 mW/cm2で 83秒間)〕を眼内の治療スポットに照射。 |
特徴 | 1)ビスダインによる光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)により、 加齢黄斑変性症(中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症)患者において 視力の維持、改善など優れた治療効果が認められた。 非PEG化リポソーム 2)正常網膜への損傷を抑え、脈絡膜新生血管(CNV)を選択的に閉塞する。 3)世界72ヵ国で承認されている(2013年2月現在)。 |
光線力学的療法(Photodynamic Therapy:PDT)
有効成分(光感受性物質)を投与した後、腫瘍組織にレーザ光などを照射することにより光化学反応を引き起こし、腫瘍細胞に対して死滅させる選択的治療法。この殺細胞効果は、レーザ光などと光感受性物質との光化学反応によって生成される活性酸素(一重項酸素)の強い酸化作用による。PDTは、レーザ光などの照射部位だけに殺細胞効果を示す局所療法であるため、外科療法に比べて侵襲が少ない。一方、有効成分(光感受性物質)による光線過敏症が起こす場合がある。
加齢黄斑変性症
眼の網膜の中心にある黄斑部に老廃物が蓄積し 毛細血管の血流が阻害されると、新生血管という新しい血管ができる。この新生血管は非常にもろくいため、血液の成分を漏出させたり、血管そのものが破れたりする。血液成分が漏出すると網膜が腫れ、網膜下に液体が溜まり、網膜が正しく働かなくなり、視力が低下する。
アムホテリシンB内封リポソーム:アンビゾーム®
用法・用量 | 投与1〜5日目の連日、14日目及び21日目に1日1回、1〜2時間以上かけて点滴静注。 |
特徴 | (1)本剤はアムホテリシンBをリポソームの脂質二分子膜中に封入することにより、 アムホテリシンBの真菌に対する作用を維持しながら生体細胞に対する傷害性を 低下し、さらにアムホテリシンBの副作用で問題となる腎臓への分布量を低減した 製剤である。非PEG化リポソーム (2) 本剤はアスペルギルス属、カンジダ属又はクリプトコッカス属等の病原真菌 に対し in vitro抗菌活性を示し、その作用は殺真菌的である。 (3) 本剤は血漿中でリポソーム型として安定に存在し、真菌表層に結合後、 リポソームからアムホテリシンBが遊離し、真菌細胞膜構成成分であるエルゴ ステロールと結合することにより、真菌細胞膜の透過性が高まり、抗真菌活性が 発現すると考えられている。 |
ドキソルビシン内封PEGリポソーム:ドキシル®
用法 | 1)卵巣癌:1 mg/分の速度で静脈内投与し、その後4週間休薬する。これを1コース として投与を繰り返す。 2)エイズ関連カポジ肉腫:1 mg/分の速度で静脈内投与し、その後2~3週間休薬する。 これを1コースとして投与を繰り返す。 |
特徴 | 1.本剤は、MPEG-DSPE で修飾された脂質二重層(STEALTH®リポソーム、 ステルスリポソーム)に、ドキソルビシン塩酸塩を封入した製剤である。 PEG化リポソーム 受動的(パッシブ)ターゲティング製剤 2.本剤は、血中循環時間の延長と腫瘍組織への選択的な滲出(EPR効果)により 抗腫瘍効果を発揮する。 3.本剤は、がん化学療法後に増悪した卵巣癌に対しては、4 週間に1 回投与し、 エイズ関連カポジ肉腫に対しては、2〜3 週間に1 回投与する製剤である。 (点滴静注) |
イリノテカン内封PEGリポソーム:オニバイド®
用法 | フルオロウラシル及びレボホリナートとの併用において、通常、成人にはイリノテカン として1 回70mg/m2(体表面積)を90分かけて2 週間間隔で点滴静注する。 |
特徴 | 1.本剤は、有効成分イリノテカン塩酸塩水和物のリポソーム製剤である。独自のリポソーム 内薬物安定化技術により、リポソームのナノ粒子にイリノテカンが封入されている。 PEG化リポソーム(ステルスリポソーム) (2) 本剤は血漿中で86%以上がリポソーム内に存在することが示された(外国人データ)。 |
【参考資料】
- ビスダイン®インタビューフォーム
- アンビゾーム®インタビューフォーム
- ドキシル®インタビューフォーム
- オニバイド®インタビューフォーム
海外で上市されているリポソーム製剤(日本で薬事承認されていない製剤)
商品名 | 薬物 | 説明 | 承認年 | 企業 |
DaunoXome® | Daunorubicin (ダウノルビシン) | treatment of HIV-related Kaposi’s sarcoma (HIV関連カポジ肉腫の治療) | 1996 | NeXstar Pharmaceuticals |
Depocyt® | Cytarabine/Ara-C (シタラビン/アラ-C) | intrathecal treatment of lymphomatous meningitis(リンパ腫性髄膜炎の髄膜内治療) | 1999 | SkyPharma Inc |
Myocet liposomal (previously Myocet®) | Doxorubicin (ドキソルビシン) | treatment of women with metastatic breast cancer(転移性乳がんの女性に対する治療) | 2000 | Elan Pharmaceuticals |
Marqibo® | Vincristine (ビンクリスチン) | the treatment of adult patients with Philadelphia chromosome-negative (Ph-) acute lymphoblastic leukemia (ALL) (フィラデルフィア染色体陰性の急性リンパ性白血病(ALL)の成人患者を対象とした治療法) | 2012 | Spectrum Pharmaceuticals Launches |
国内で医薬品医療機器法上未承認または適応外である医薬品等のリスト(2020年4月30日時点のデータ)(承認年月日順)https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/hoken/iryokiki/dl/kokunai_list.pdf
【参考資料】
・Advances in liposomal drug delivery to cancer: An overview, Shivani Saraf et al., Journal of Drug Delivery Science and Technology, Volume 56, Part A, April 2020, 101549.
コメント