経口放出制御製剤:時限放出型製剤

放出制御DDS

経口放出制御製剤:時限放出型製剤

経口放出制御製剤:徐放性製剤と時限放出型製剤

放出制御(コントロールドリリース)は、製剤から薬物が放出・溶出する速度を調節することである。経口放出制御製剤には、徐放性製剤、複合型放出制御製剤、反復放出型製剤、傾斜放出型製剤、パルス型(シグモイド型)放出制御製剤、放出遅延型放出制御製剤、時限放出型製剤、時間依存放出制御製剤、消化管部位依存性放出制御製剤、胃内滞留製剤、消化管粘膜付着製剤、大腸ターゲティング製剤などと呼ばれる様々な製剤等が存在する。それ故、経口放出制御製剤は、徐放性製剤以外のカテゴリーは教科書によって異なっているようである。本サイトでは、日本薬学会の定義に従って分類する。

コントロールドリリース、controlled release

製剤から薬物が溶け出す速度を調節すること。内用はもちろん経皮投与や注射においても治療効果や患者のQOLを高めるために用いられている。大きく分けると徐放性製剤と時限放出型製剤に分類される。徐放性製剤は、服用回数を減らすことができ、また、血中の有効成分濃度の急な上昇に伴う副作用の発現頻度を下げることができる。時限放出型製剤は、服用後一定の時間が経過した後速やかに薬物を放出するもので、治療効果の向上、副作用の軽減や薬物耐性の発現抑制が図られる。いずれの場合もさまざまな製剤学的工夫がなされているので、砕いたり噛んだりせずに製剤そのままの形で用いることが大切である。(2006.10.17 掲載)

公益社団法人 日本薬学会 薬学用語解説 放出制御 – 薬学用語解説 – 日本薬学会 (pharm.or.jp)

これによると、経口放出制御製剤は、徐放性製剤と時限放出型製剤の2つに大別され、徐放性製剤以外はすべて時限放出製剤に分類される。消化管部位依存性放出制御製剤(胃内滞留製剤、腸溶性製剤、大腸ターゲティング製剤など)も時限放出制御型製剤に含まれるという考えである。

経口時限放出型製剤特徴代表的製剤
胃内滞留製剤胃内浮遊性製剤とも呼ばれる。胃内に長時間滞留して薬物を
徐放化する技術であり、消化管上部で主に吸収される薬物
(リボフラビンなど)に対して有効な経口持続性製剤。
製剤技術として、Hydrodynamically Balanced System (HBS)
などがある。
・GLUMETZA® Tablets
 (metformin hydrochloride)
・GRALISE® Tablets
(gabapentin)
・JANUMET® XR
(sitagliptin, metformin HCl)
腸溶性製剤胃で溶けず、小腸のpHで溶解するコーティング剤
(腸溶性コーティング剤)で剤皮を作ることにより小腸で薬物を放出することができる製剤。
顆粒剤、錠剤、カプセル剤などがある。
L-ケフレックス顆粒
(セファレキシン)
L-ケフラール顆粒
(セファクロル)
セパミット-Rカプセル
(ニフェジピン)
ブロクリン-Lカプセル
(ピンドロール)
ペルジピンLAカプセル
(ニカルジピン塩酸塩)
ソラミランカプセル
(イコサペント酸エチル、
軟カプセル剤)
大腸ターゲティング製剤中性付近のpHで放出特性を示す腸溶性
コーティングを施した腸溶性製剤
や大腸に豊富に存在する腸内細菌由来の酵素
(アゾリダクターゼ、キチナーゼ、アミラーゼ
様酵素など)で代謝され薬物を放出する製剤。
Colon-targeted Delivery System(CODES)は、
大腸で放出されたラクツロースが腸内細菌で分解
され、有機酸(酪酸、酢酸など)により大腸のpH
が低下し、胃溶性基剤が溶解することにより
薬物が放出される製剤。
5-アミノサリチル酸製剤
Colon-targeted Delivery System(CODES)
プロドラッグ(サラゾスルファピリジン)
キトサンカプセル

パルス型放出制御製剤という分類もある。パルス型放出制御製剤は、生体から薬物を必要としている情報が入った時に、パルス型に薬物を放出する製剤である。パルス型の薬物放出は、シングルパルス型とマルチパルス型の2つに大別される。シングルパルス型は、一度だけ製剤が崩壊して薬物を放出するタイプで、マルチパルス型は、製剤が可逆的に変形して、繰り返し、薬物を何度も放出する製剤である。内部環境変化(pH、温度、酵素、化学物質など)及び外部刺激(熱、磁気、超音波、近赤外など)のような環境変化に応じた薬物放出せるタイプと後述するように製剤の投与時間(時期・時刻)に関する時間薬理学や時間治療学の概念に基づいて、薬理作用の時間的変動を明らかにして、薬物の効果的な投与時間の設定や副作用軽減を目指した薬物放出に大別される。

生体の概日リズム(サーカディアンリズム)を考慮した製剤

以前より、投薬時刻や投薬タイミングが、薬の効果に影響を与えることが報告されてきた。これは
(時間薬理学:chronopharmacology)と呼ばれる。そのため、投薬タイミングを考慮し、医薬品の有効性や安全 性 を 高 め る こ と もは重要であり、時 間 治 療 学(chronotherapy)の考え方も浸透してきている。また、医薬品の添付文書などに服薬時刻が明示されるようになった製剤も存在する。さらに、生体リズムを考慮した時間制御型DDS(chrono-drug delivery system)や服薬時刻により処方内容を変更した製剤が開発されている。

疾患の日内変動

疾患凡そのピーク時間
関節痛午前2~3時
気管支喘息午前3~4時
片頭痛午前6時
アレルギー性鼻炎午前7時
細菌感染による発熱午前8時
抑うつ症状午前9時
心筋梗塞午前9~10時
脳梗塞午前10~11時
てんかん発作午後4時
ウイルス感染による発熱午後6時
皮膚過敏午後11時
生体リズムと時間薬理学-時間治療への展望-、枝川霧邦、中村孝博、早稲田大学高等研究所紀要第 3 号、57-66 (2011)

時間薬物治療,時間化学治療の例

疾患例疾患の特性・考えられる要因適用薬物(効能)服薬(予薬)方法・目的
気管支喘息朝方4時頃に発作のピーク
夜間に副交感神経の緊張
夜間にアドレナリン低下
明け方の室温低下
テオフィリン
β2-刺激薬(気管支拡張)
徐放性製剤を就寝前服薬
→ 早朝の血中濃度増加
気管支喘息朝方4時頃に発作のピーク
夜間に副交感神経の緊張
夜間にアドレナリン低下
明け方の室温低下
ツロブテロール(経皮吸収型製剤)
ホクナリンテープ
ツロブテロールテープ
1日1回、胸部、背部
又は上腕部のいずれか
に貼付
消化性潰瘍夜中(0時頃)に発症
夜間に胃酸分泌上昇
H2ブロッカー(胃酸分泌抑制)夕刻服薬
→ 胃酸分泌の抑制
高血圧症状夕方(16時頃)に発症
午後に血圧上昇
午後にアドレナリン上昇
フロセミド(利尿薬)夕刻服薬
→ 利尿効果増大による降圧
高血圧症状夕方(16時頃)に発症
午後に血圧上昇
午後にアドレナリン上昇
プロプラノロール(製剤)InnoPran XL
(extended-release capsules)
高血圧症状夕方(16時頃)に発症
午後に血圧上昇
午後にアドレナリン上昇
ジルチアゼム(製剤)Cardizem LA
(extended-release tablets)
高血圧症状夕方(16時頃)に発症
午後に血圧上昇
午後にアドレナリン上昇
ベラパミル(製剤)Verelan PM
(extended-release capsules)
高血圧症状夕方(16時頃)に発症
午後に血圧上昇
午後にアドレナリン上昇
ベラパミル(製剤)Covera-HS
(extended-release tablets – controlled-onset
がん正常細胞の増殖:朝~昼に活発,夜沈静
癌細胞:夜活発,昼沈静が多い
シスプラチン(制がん剤)夕刻投与
→ 腎毒性低下
労働衛生学分野への「時間毒性学」の導入-労働衛生学と時間生物学-, 三浦 伸彦, 大谷 勝己, 産衛誌, 57 (1): 21–25 (2015)

参考資料

  1. 図解で学ぶDDS第2版、橋田充監修、髙倉喜信編集、じほう(2016)
  2. DDS最前線第2版、金尾義治、廣川書店(2010)
  3. 臨床製剤学改訂第4版、三嶋基弘・内田亨弘・平井正巳・川嵜博文編集、南江堂(2017)
  4. キトサンを用いた大腸崩壊性カプセルの崩壊部位、柏木秀樹、湯川研一、腸内細菌学雑誌 20 : 13–17 (2006)
  5. 生体リズムと投薬タイミングに実証される時間治療の展望、大戸茂弘、時間生物学、9(1), 20-27 (2003)
  6. 時間薬理学とはなにか、大戸茂弘、小柳 悟、松永直哉、日薬理誌, 137, 115-119(2011)
  7. 生体リズムと時間薬理学-時間治療への展望-、枝川霧邦、中村孝博、早稲田大学高等研究所紀要第 3 号、57-66 (2011)
  8. 労働衛生学分野への「時間毒性学」の導入-労働衛生学と時間生物学-, 三浦 伸彦, 大谷 勝己, 産衛誌, 57 (1): 21–25 (2015)
  9. 体内時計と薬の関係を利用した時間治療-現状と今後の展望-、大戸茂弘、歯薬療法、37(1), 1-8 (2018)
  10. Chronotherapeutics and Chronotherapeutic Drug Delivery Systems, J Sajan, TA Cinu, AJ Chacko, J Litty and T Jaseeda, Tropi J Pharm Res, 8 (5), 467-475 (2009).

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