ポリエチレングリコール(PEG)
PEGは、エチレングリコール反復単位から構成される化学化合物である。一般にPEGはPEO(ポリエチレンオキシド)やPOE(ポリオキシエチレン) としても知られる。通常、PEGは分子量の異なる混合物であり、その混合物の違いは、平均分子量として表記される。

PEGは一般に次のような特徴を有する。
- 毒性及び免疫原性が低い。(ABC現象に注意が必要)
- タンパク質やリポソームなどの薬物担体に結合すると、水溶性が上昇し、凝集性が低下する。
PEG化タンパク質

タンパク質へのPEG修飾の変動要因
・PEG分子量、PEG修飾量、PEGとタンパク質間のスペーサーの種類(生分解性の有無)
・一般的なPEG化(Pegylation)の特性
長所 | 短所 |
タンパク質の血中滞留性が向上 (腎排泄抑制、細網内皮系取込抑制) | タンパク質の活性が低下 |
タンパク質の抗原性が低下 | タンパク質のコンフォメーションが変化 |
タンパク質の水への溶解性が上昇 | |
タンパク質の投与量の低下 | |
タンパク質の皮下投与の場合、皮下組織から 生体内への吸収が緩やかで持続性を示す。 |
代表的なPEG化タンパク質
タンパク質 | 一般名 | 商品名 | PEG | 主な適用症 |
アデノシンデアミナーゼ | ウシペグアデマーゼ | アダジェン 日本未承認 | アデノシンデアミナーゼ欠損症 | |
アデノシンデアミナーゼ | エラペグアデマーゼ | レブコビ | 平均分子量約5.6kDaのPEG平均約13分子で化学修飾 | アデノシンデアミナーゼ欠損症 |
インターフェロンα-2a | ペグインターフェロン アルファ-2a | ペガシス | 平均分子量約40kDaの分枝型PEG1分子で化学修飾 | C型肝炎 |
インターフェロンα-2b | ペグインターフェロン アルファ-2b | ペグイントロン | 平均分子量約12kDa の一本鎖PEGで化学修飾 | C型肝炎 |
成長ホルモン | ペグビソマント | ソマバート | 平均分子量約5kDaのPEG平均約5分子で化学修飾 | 成人成長ホルモン分泌不全症 |
エリスロポエチン | エポエチン ベータ ペゴル | ミルセラ | 平均分子量約30kDa のPEG1分子で化学修飾 | 腎性貧血 |
ヒト化抗TNF-α抗体 | セントリズマブ ペゴル | シムジア | 平均分子量約20kDa のPEG2分子で化学修飾 | 関節リウマチ |
顆粒球コロニー形成刺激因子 (G-CSF) | ペグフィルグラスチム | ジーラスタ | 平均分子量約20kDa のPEG1分子で化学修飾 | がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制 |
血液凝固第Ⅷ因子アナログ | ルリオクトコグ アルファ ペゴル | アディノベイト | 平均分子量約20kDa のPEG2分子で化学修飾 | 血液凝固第Ⅷ因子欠乏者における出血傾向の抑制 |
ヒト化抗抗腫瘍壊死因子(TNF)-α抗体Fab’断片 | セルトリズマブ ペゴル | シムジア | 平均分子量約20kDa のPEG2分子で化学修飾 | ・関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む) ・既存治療で効果不十分な 尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症 |
糖鎖付加化エイスロポエチン
タンパク質 | 一般名 | 商品名 | 糖鎖 | 主な適用症 |
ヒトエリスロポエチン | ダルベポエチン アルファ | ネスプ | N-結合型糖鎖を2分子で化学修飾 | 腎性貧血、骨髄異形成症候群に伴う貧血 |
【参考資料】
- レブコビ添付文書
- ペガシス添付文書
- ペグイントロン添付文書
- ソマバート添付文書
- ミルセラ添付文書
- シムジア添付文書
- ジーラスタ添付文書
- アディノベイト添付文書
- シムジア添付文書
- 図解で学ぶDDS 第2版、橋田充(監修)、高倉喜信(編集)、じほう (2016).
- 進歩する薬物治療 DDS最前線 第2版、金尾義治、廣川書店(2010).
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